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アジア債券は2025年に入り、堅調に推移

金利低下、インフレの緩和、良好な経済ファンダメンタルズ、さらにドル安が、2025年のアジア現地通貨建て債券市場を支えるとみられます。

Asia Pacific Head of Fixed Income, Head of SSGA Singapore

2024年、予想外に堅調な経済指標と利下げサイクル開始の遅れが相まって、世界の債券市場にとってはやや不安定な1年となりました。しかし、その後、経済指標は軟化し、インフレ率も緩和していることから中央銀行はさらなる借入コストの引き下げを検討するとみられます。トランプ氏が大統領に就任した今、こうした利下げペースを予測するのはより難しくなるかもしれませんが、低下傾向は明らかです。さらに、こうした不透明感は、緩和サイクルが進むにつれて、投資家がデュレーション・エクスポージャーを拡大または調整する戦術的な余地を生むかもしれません。

今年は地政学的なテーマも注目されるでしょう。世界経済は過去数十年と変わらぬように見えるかもしれませんが、こうした見方は、長年築き上げてきた経済・金融のつながりを断ち切る恐れのある要因を覆い隠しています。例えば、米中間の貿易力学が悪化する可能性があり、米国が中国製品に課す関税の引き上げは、米ドルの価値上昇と人民元の下落を示唆しています。より広範には、中国との比較で競争力が高まる市場もあれば、関税を回避すべく生産ルートの変更をもくろむ中国企業からの投資が拡大する市場もあるかもしれません。

財政面では、資本プロジェクトへの政府支出の増加は、エネルギーや産業インフラなどに向けられると予想され、こうした支出は事業拡大を後押しするため、成長予測がより楽観的になれば、金利上昇につながる可能性があります。

こうした背景から、アジア債券市場に価値があることは間違いないと見ていますが、投資家は不安定な状況が強まる可能性を受け入れる必要があります。

人口動態が国債利回りを支える可能性

中央銀行がインフレを重視せず、内需と世界的な経済活動を反映して金利を調整する中、多くの市場で国債が魅力的なリターンをもたらすものと予想されます。アナリストは足元で、米国の借入コストは3.75%程度まで低下すると予測しており、利下げが実施されれば、主に償還期間の短い債券が牽引して、イールドカーブは低下(下方にシフト)するとみられます。

長期的な人口動態のトレンドも、債券に対する当社の強気なスタンスを支えています。労働力人口と生産性の伸びが鈍化することによって、多くの先進国市場で成長が抑制され、その結果、ソブリン債利回りは中長期的な重しとなる可能性があります。
逆に、財政赤字と高水準の債務が脅威となり、当社の全般的に楽観的な見通しに対するリスクを最も明白に示しています。


好ましいリファイナンス環境がアジアのハイイールド市場にチャンスをもたらす

スプレッドが2007年以降で最もタイトになっているため、ハイイールド債のパフォーマンスは、スプレッドの縮小よりも、むしろ原債券の利回り低下に左右されることになるでしょう。

満期の壁が近づいているという懸念から、多くの発行体が低利回りとタイトなスプレッドを利用して借り換えを行っており、この傾向は主に米ドル市場で見られます。より身近なところでは、アジアの発行体にも、借り換えが有利な市場環境によって同様の機会がもたらされるとみています。

投資適格債に関するスプレッドの縮小余地は限定的

クレジット・ファンダメンタルズは依然として堅調ですが、クレジット・サイクルが進むにつれて、バランスシートの安定性とインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)は低下することが予想されます。米国の非金融セクターのレバレッジはパンデミック時の最高水準から低下したものの上昇に転じています。これらの非金融セクターの利益率も過去最高水準に達しています。

とはいえ、このパターンが緩和した場合、インタレスト・カバレッジ・レシオが改善することは考えにくく、悪化する可能性があります。より一般的に言えば、投資適格債のスプレッドがすでに過去最低水準に近づいているため、スプレッドがさらに縮小する余地は限定的と思われます。

良好なファンダメンタルズが新興国債務を支えるだろう

エマージング市場(EM)全体では、多くのクレジット・イベントが予想されているものの、米国債の見通しが明るいことから、EM債にはまだ投資機会があると思われます。さらに、米国の金利低下は米ドルの価値を下落させ、EM投資の魅力を高めるでしょう。

とはいえ、2025年にすべての市場が、同程度の政策支援を行うとは考えられません。例えば中国は、現地の需要を高めることはできますが、現在および将来の取り組みが成功するかどうかは明確ではありません。

トランプ政権の政策方針の変化は、米国債利回りや米ドルに影響を与え、その結果、EM債務の様々なセグメントに影響を及ぼすでしょう。保護主義的な米国の通商政策は、対象となる市場によっては個々の市場に重大な影響を及ぼすとみられます。

全体として、特にインフレが緩和し始めていることから、アジアは引き続き堅調な成長を続けると当社は考えます。さらに、2025年には、より健全な企業環境と域内の資金流入の増加に後押しされ、現地通貨建て債券市場は拡大すると思われます。

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