ABF汎アジア債券インデックス・ファンド(PAIF)は過去20年にわたり、アジアの経済成長機会に容易にアクセスでき、魅力的なリスク調整後リターンを期待できることを支えに運用されてきました。本稿では、今後もそうした傾向が続くと予想される理由を探っていきます。
指数連動型ファンドであるPAIFは、投資家にアジアの8つの主要市場の現地通貨建て債券への幅広いエクスポージャーを提供します。ベンチマークである Markit iBoxx ABF 汎アジア指数に連動する投資成果(手数料および費用控除前)を上げることを目標としています。同指数は、各市場の債券発行規模、ならびに流動性、信用格付け、規制、法律、財政環境、取引・決済インフラなどの要因を考慮して設計されています1。
当然ながら、中国は人口や地理的条件および経済力の強さから、PAIFの他の投資対象市場に比べて大きな債券市場を有しています。しかしiBoxx ABF汎アジア指数は単一市場の配分比率の上限を25%に設定しているため、中国の配分比率も25%までとなっています。中国に続いて配分比率が高いのはシンガポール、韓国、マレーシアで、最も低いのは香港とフィリピンで、それぞれ約8%、6%となっています2。
国際通貨基金(IMF)は、アジア市場の貿易・金融環境の統合がさらに進めば域内活動は増加すると予想しています3。また最近の関税問題はサプライチェーンの変化に拍車をかけ、市場に対して輸出への依存を減らして経済の構造変化を促す可能性があります4。アジア太平洋域内の貿易・投資が拡大すれば、債券の発行は増加し、PAIFの投資対象となる債券市場の厚みと幅の拡大につながる可能性があります。
域内の市場は歴史的に、一人当たりの所得を拡大するために輸出に依存してきました。これまではそれで上手く行っていましたが、各市場とも生産性向上には消費とサービスに軸足を移す必要があると認識しています5。
たとえば、中国は国内消費を押し上げるために様々な政策措置を打ち出しています6。政府は、国民が支出に慎重姿勢をとっており、それがデフレスパイラルを誘発していることを認識しています。こうした慎重姿勢は、不動産市況、失業、社会的セーフティネットの弱さなどの要因に対する懸念を反映しています7。
アジア地域のエクスポージャーを追求する投資家には様々な選択肢があります。株式もその1つですが、一般的に債券に比べてリスクが高いと考えられています8。外貨建て社債という選択肢もありますが、通常米ドルまたはユーロ建てで発行される点を踏まえると、現地通貨建て債券よりリスク水準は総じて高くなります9。なぜなら、ソブリン債を発行する政府は自国通貨をいつでも増刷できるのに対し、外貨建て債券の発行体にはそうした選択肢がないからです。発行体は当該通貨建てで投資家に返済する必要があるため、返済されない可能性は低いものの、依然として残っています。そのため、社債は多くの場合、PAIFの投資対象である政府や準政府が発行する債券よりリスクが高いと見なされます10。
PAIFの対象である8つの市場を見ると、主要な投資家のタイプは大きく異なります。たとえば、中国では、銀行がPAIFの主要な投資家ですが、タイでは年金や保険会社が中心です11。あらゆる市場に共通しているのは投資家が長期保有志向ということ、つまり、センチメントが短期的に変動してもボラティリティが過度に上昇することはありません。一方、海外投資家や短期的な市場参加者の場合、一般的に保有期間は限られています。
全体として、PAIFの魅力はシンプルな取引でアジアの経済成長機会から恩恵を受けられる点です。加えて、当ファンドの投資手法は20年にわたり、相対的にリスクを抑えつつ一貫して魅力的なリターンを提供してきました。