iBoxx ABF 汎アジア指数は、2025年12月にプラスのリターンを記録し、年間を良好な形で締めくくりました。米ドル建て・為替ヘッジなし指数は、アジア通貨の幅広い上昇に支えられて 1.09% 上昇し、一方で米ドル建て・為替ヘッジあり指数は 0.10% 上昇しました。アジア債券市場の利回り動向はまちまちであり、各国の国内ファンダメンタルズや政策の違いが反映されました。インドネシアは月間で最も好調で、債券利回りが 25bps(ベーシス・ポイント)低下したのに対し、フィリピンは 14bps上昇し、最も大きな利回り上昇を記録しました。全体として、2025年12月のアジアの10年債利回りは平均で 1bps上昇しました。
2025年第4四半期(同四半期)にアジア債券はプラスのリターンを上げ、iBoxx ABF 汎アジア指数(米ドル建て・為替ヘッジなし)は 0.41% 上昇しました。地域全体の10年国債利回りは平均で9bps上昇しましたが、市場ごとのパフォーマンスは大きく異なりました。韓国(+43bps)、タイ(+22bps)、シンガポール(+21bps)では利回りが大きく上昇した一方、インドネシアでは30bpsと大幅に低下しました。
アジア通貨も米ドルに対して小幅に下落し、指数の為替ヘッジありバージョンのリターンは+0.10%と控えめなものとなりました。同四半期、アジアの多くの中央銀行は成長とインフレに対する混在したシグナルを背景に、慎重な金融スタンスを維持し、政策金利を据え置きました。一方で、いくつかの当局はハト派姿勢を示しました。フィリピン中央銀行(BSP)は四半期を通じて政策金利を合計50bps引き下げ、タイ銀行(BOT)は2025年12月の会合で25bpsの利下げを実施しました。さらに、香港金融管理局(HKMA)は同四半期に合計50bpsのベースレートを引き下げ、4.0%としました。
| 市場 | 現地通貨建て債券リターン | 為替リターン(FX) | USDベースのトータルリターン |
| タイ | 0.5% | 2.1% | 2.6% |
| 韓国 | 0.0% | 2.1% | 2.1% |
| マレーシア | 0.3% | 1.8% | 2.1% |
| 中国 | -0.3% | 1.2% | 1.0% |
| インドネシア | 0.9% | -0.1% | 0.8% |
| シンガポール | -0.7% | 0.9% | 0.2% |
| 香港 | -0.1% | 0.0% | -0.1% |
| フィリピン | -0.4% | -0.3% | -0.7% |
過去のパフォーマンスは、将来のパフォーマンス保証するものではありません。
タイ(USDヘッジなし:2.6%)
タイの10年国債利回りは2025年12月に10bps低下したものの、四半期では22bps上昇しました。また、タイバーツは2025年12月のリターンに2.1%寄与しました。製造業は堅調で、S&P Global タイ製造業PMIは2025年12月に57.4へ上昇し、2023年5月以来の高水準となり、前の2カ月の56.8から改善しました。一方、経済成長は鈍化し、国内総生産(GDP)は2025年第3四半期に前年比1.2%増となり、第2四半期の2.8%から減速しました。インフレは弱い状態が続き、消費者物価指数(CPI)は2025年12月に前年比▲0.28%と予想を上回る小幅な下落にとどまり、11月の▲0.49%から縮小しました。これは主にエネルギー価格の下落による非食品価格の低下が背景です。労働市場は改善しており、失業率は2025年第3四半期に0.76%へ低下し、前期の0.88%から改善しました。成長の低迷を受け、タイ銀行(BOT)は2025年12月に政策金利を25bps引き下げて1.25%とし、過去1年間で5回目の利下げ、累計125bpsの引き下げとなりました。これには外部環境の悪化、高水準の家計債務、強いタイバーツ、そして2026年2月の総選挙を控えた政治的不透明感などが影響しています。
韓国(USDヘッジなし:2.1%)
韓国の10年国債利回りは2025年12月に3bps上昇し、韓国ウォンはリターンに2.1%寄与しました。インフレ率は2025年12月に2.3%へとわずかに低下し、2025年第3四半期のGDP成長率は1.8%となりました。一方、労働市場はやや弱含み、失業率は2025年11月に2.7%へ上昇しました。製造業活動には改善の兆しが見られ、S&P Global PMIは50.1へ上昇し、拡大基調に戻りました。韓国銀行(BOK)は、経済見通し、住宅市場リスク、通貨の変動性への懸念を理由に、政策金利を2.50%で据え置きました。
マレーシア(USDヘッジなし:2.1%)
マレーシアの10年国債利回りは2025年12月に4bps上昇し、マレーシアリンギットは大きく上昇してリターンに約1.8%寄与しました。インフレ率はやや上昇し、2025年11月の前年比上昇率は1.3%から1.4%へと小幅に加速しました。労働市場は改善し、失業率は2.9%へ低下しました。製造業は堅調で、S&P Global マレーシア製造業PMIは2025年12月に50.1と、11月から横ばいだったものの、2024年5月以来の高水準を維持しました。こうした環境を受け、マレーシア中央銀行(バンク・ネガラ・マレーシア、BNM)は2025年11月の会合で2.75%の政策金利を据え置きました。市場予想通りの判断であり、物価が安定するなか、現行の政策スタンスは経済成長を支えるうえで適切であるとの見解を示しました。
中国(USDヘッジなし:1.0%)
中国では2025年12月、四半期末にかけて安定化の兆しが見られました。これは、米国以外の市場向け輸出が底堅く推移したことや、米中貿易休戦が継続したことで外部環境の不確実性が低下したことに支えられたものです。インフレ率は年末にかけてわずかに上昇し、消費者物価指数(CPI)は2025年11月の前年比0.7%から12月には0.8%へ上昇し、デフレ圧力が徐々に和らいでいることを示しました。一方で、卸売物価指数(PPI)は前年比▲1.9%と依然としてデフレ圏にあり、過剰供給や産業部門の価格決定力の弱さが鮮明となりました。
国内需要は依然として脆弱で、固定資産投資は2025年1〜11月期に前年比▲2.6%と、市場予想を下回りました。製造業は小幅に改善し、公式製造業PMIは2025年11月の49.9から12月に50.1へ上昇し、再び拡大基調に戻りました。サービス部門も緩やかな拡大を示し、サービスPMIは52.0となりました。ただし、消費需要の弱さは続いています。
外需は年末にかけて底堅く、2025年11月の輸出は前年比+5.9%、輸入は+1.9%と非米国向け輸出の堅調さが影響しました。労働市場は概ね安定しており、都市部失業率は2025年11月に5.1%と横ばいでした。
全体として、景気モメンタムは年末に向けて鈍化しました。2025年第3四半期のGDP成長率は前年比4.8%と、第2四半期の5.2%から減速し、過去1年間で最も低い伸びとなりました。こうした状況のもと、中国人民銀行(PBoC)は1年物ローンプライムレート(LPR)3.00%、5年物住宅ローン基準金利3.50%を7カ月連続で据え置く一方、市場安定化に向けて国債買い入れを再開しました。
債券市場は慎重ながらも改善の兆しを示し、短期金利が長期金利より速く低下する“ブル・スティープ化”が進みました。2025年12月末の10年国債利回りは1.84%と、第3四半期末から2bps低下し、2年国債利回りはより大きく9bps低下して1.37%となりました。また、人民元は同四半期に対米ドルで1.9%上昇し、6.99で引けました。
インドネシア(USDヘッジなし:0.8%)
インドネシアの10年国債利回りは2025年12月に25bps低下し、一方でインドネシアルピアのリターンは▲0.1%と小幅なマイナスとなりました。インフレ率は上昇し、2025年11月の2.72%から12月には2.92%へと加速しました。労働市場は改善傾向にあり、2025年第3四半期の失業率は4.85%へ低下しました。製造業はやや減速したものの拡大域を維持し、S&P Global 製造業PMIは2025年11月の9カ月ぶり高水準である53.3から2025年12月には51.2へ低下しました。
インドネシア中央銀行(BI)は、2024年9月以降の累計150bpsの利下げを経て、2025年12月の政策会合で基準金利4.75%を3会合連続で据え置きました。これは、インドネシアルピアの安定と成長支援を両立させつつ、インフレ率を2.5%±1%の目標レンジに維持するための緩和的スタンスを再確認するものです。
シンガポール(USDヘッジなし:0.2%)
シンガポールの10年国債利回りは2025年12月に9bps上昇し、シンガポールドルのリターンに0.9%寄与しました。インフレ率は落ち着いた状態が続き、2025年11月の前年比上昇率は1.2%と前月から横ばいで、市場予想をやや下回りました。労働市場は安定しており、季節調整済み失業率は2025年第3四半期に2.0%でした。
経済成長は大幅に強まり、速報値によれば2025年第4四半期のGDPは前年同期比5.7%増と、第3四半期の上方修正後の4.3%を上回り、2024年第3四半期以来で最も力強い伸びとなりました。シンガポールの基準金利は直近で1.03%となっており、1988年以降の長期平均である1.25%を下回る水準にあります。
香港(USDヘッジなし:-0.1%)
香港の10年国債利回りは2025年12月に7bps上昇しました。インフレ率は安定しており、2025年10月と同じく11月も前年比1.2%で推移しました。労働市場も安定しており、2025年11月までの3カ月間の失業率は3.8%で横ばいでした。事業活動はやや減速したものの拡大基調を維持し、S&P Global 香港PMIは2025年11月の約3年ぶり高水準から、12月には51.9へと小幅に低下しました。
米国の金融政策に連動する形で、香港金融管理局(HKMA)は2025年12月にベースレートを25bps引き下げて4.0%とし、年内3回目の利下げを実施しました。これにより、借入コストは2022年10月以来の低水準となり、米ドルペッグ制の下で米国の利下げサイクルを反映した動きとなりました。
フィリピン(USDヘッジなし:-0.7%)
フィリピンの10年国債利回りは2025年12月に14bps上昇し、フィリピンペソは為替リターンを▲0.3%押し下げました。インフレ率は上昇し、2025年11月の1.5%から12月には1.8%へ加速し、市場予想を上回る結果となりました。製造業の景況感も改善し、S&P Global 製造業PMIは2025年11月の47.4から12月には50.2へ上昇し、新規受注の増加を背景に再び拡大基調へ転じました。
労働市場も強含み、2025年11月の失業率は4.4%へと低下しました。こうした環境のもと、フィリピン中央銀行(BSP)は年内最終会合で政策金利を25bps引き下げて4.5%とし、5会合連続の利下げとなりました。これにより、2025年の累計利下げ幅は125bpsに達し、景気の下支えに向けた継続的な緩和姿勢が示されました。