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アジアがイノベーションを推進するなか、債券に投資機会

アジアには経済のファンダメンタルズに加え、人口が増加し、人々が一段と豊かになったことにより、イノベーション主導の成長が期待できる分野が数多くあります。

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Asia Pacific Head of Fixed Income, Head of SSGA Singapore

アジア経済の規模を考慮し、本稿では債券投資機会の拡大につながる3つの分野 ―― 農業、エネルギー、デジタルの普及 ―― における企業および制度面のイノベーションに的を絞ることにします。

農業のイノベーション: 生産と収入を押し上げる

農業は、アジアにおけるイノベーションの対象として特に興味深い分野です。世界の人口は2050年に100億人に達する可能性もあり、世界の食料需要は50%超増加すると見込まれています1。こうした状況に対処するため、アジア地域では正確な整地、播種の自動化、スマート水管理などの分野で、新たな技術が使用されることが当たり前になりつつあります。こうした技術の開発は、生産の増加と必要な労働力の削減を可能にし、ひいては、農家の収入増につながります。また高速データネットワークが地域全体に普及するのに伴い、コネクティビティ(ネットワークへの接続性)が改善すれば、中小事業者もデジタルツールを取り入れることができ、生産性向上につながるでしょう。

一方、国際稲研究所(IRRI)は、稲作に要する水量が少ない品種の開発を進めています。IRRIは新たな灌漑技術の普及にも取り組んでいます。間断灌漑(AWD)と呼ばれるこの技術を用いると、水の消費量を20%減らし、温室効果ガス排出量を最大50%削減できます2。さらに、このアプローチを導入すれば、三期作が可能となります。

アジアは水力発電と太陽光発電で先行

中国の水力発電量は400ギガワット超と世界最大で、米国の約4倍にのぼります3。インドと日本でも、大規模な水力発電プロジェクトが進んでいます。今後に関しては、アジアには他にもベトナムやラオスなどの、水力発電に適した地形をもつ国があります4。特に重要な点は、このエネルギー源は地域の化石燃料への依存をある程度減らし、温室効果ガス排出量目標の達成に役立つとみられます5

中国南西部では、水力と太陽光による新たなハイブリッド発電所の建設が始まっています。完成すれば、このタイプの発電所としては世界最大規模となります6。水力発電プロジェクトには、安定給水への信頼性向上によって、農業生産の拡大につながるという利点もあります。

また、中国は太陽電池の生産量全体の約77%を占め、市場で圧倒的なシェアを有しています。そのノウハウは、地域全体ならびに世界の排出量削減目標の達成に役立つはずです。太陽電池生産量第2位はベトナムで、これにマレーシア、インドが続き、この点からもアジアが同セクターを席捲していることがわかります7。最近では、より薄型で従来は置けなかった場所にも設置しやすい太陽電池が、日本、次いで中国で開発されるなど、技術の進歩が見られます8

スマート化が進むアジアの都市

アジアのテクノロジー市場はデジタル化が比較的深く浸透しており、テクノロジーに精通した利用者が多く、5G通信網が拡大しています。

コロナ禍とそれに伴うロックダウン、ならびにサプライチェーンの混乱がもたらした有益な結果の1つに、フードデリバリー、個人向けサービス、ゲーミング、医療アプリなど一部のセクターにおける、消費者向けテクノロジーのイノベーション加速があげられます9

アジアでは複数のセンサーを人口知能(AI)と組み合わせることで、さまざまな産業の最適化を進める、スマートシティへの取り組みが広がっており、これも将来の技術進歩に向けた確固たる土台となります10。スマートシティでは、空気の質に関するアラートの発信から交通問題の緩和まで、さまざまな課題にリアルタイムで対応することが可能です。

政府によるスタートアップ支援も不可欠です。シンガポール、中国、香港、インド、日本はいずれも、テクノロジーセクターの重要性を認めています。中国ではサイエンスパークが建設中で、イノベーションを促進するために、進出企業には税制優遇措置やその他の財政支援措置が提供されます11

また中国への技術移転の制限をめぐって懸念が広がるなか、先ごろ、北京の企業が、新たなオープン・ソースAIモデルを発表したことが、明らかとなりました。これは、一部の側面で、他の地域のモデルをアウトパフォームする可能性があります12

ファンダメンタルズは支援的

アジアの技術ノウハウや政府による的を絞った支援策は、アジアの企業が模倣者ではなくグローバル・リーダーになりつつあることを意味しています。イノベーション主導の成長は、景気拡大に伴うインフレ上昇、ひいては中央銀行による利上げにつながることもあるため、債券市場には逆風となる可能性があります。それでも、最終的には、長期的な構造改革の土台となり、経済のレジリエンス(強靭性)を下支えすることで、社債や国債の発行体のファンダメンタルズをサポートするでしょう。

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