Skip to main content
インサイト

海外投資家を引き付けるアジア債券の魅力とは?

アジアの多様性と成長余地を踏まえ、海外投資家にとって特に魅力的な市場と債券タイプ、ならびにその理由について考察します。

Asia Pacific Head of Fixed Income, Head of SSGA Singapore

政府は通常、国内支出を賄う目的で債券を発行するため、ほとんどのソブリン債は現地通貨建てで発行されます。市場参加者の中には、年金や、年金タイプの給付を行う必要がある退職基金や保険基金が多いことから、そうした債券の購入者は国内投資家が多くなる傾向があります1。このように現地通貨建て国債は、資産と負債を管理する上で相対的に低リスクの方法です。

海外投資家の中には高い利回りが期待できる点に惹かれ、現地通貨建て国債に投資する傾向がみられます。したがって、そうした投資家は為替リスクをヘッジすることを選択します。また、その現地通貨が上昇すると考えて、為替リスクを積極的に取りに行く投資家もいます。

世界的に競争力があり、質の高い発行体

アジアの海外投資家は通常、質の高い社債を選ぶ傾向にあり、米ドルやユーロなどの「ハード」カレンシー建てを選好します。その好例が韓国の半導体チップメーカーの債券です2

一方、知名度の低い国内中心の企業は、海外投資家の関心をあまり引き付けられずにいます。このように投資意欲が乏しいことから、そうした企業は外貨建て債券の発行に動きにくいとみられます。発行する場合は投資家の関心を引き付けるために、かなり高い利回りを提供する必要があるでしょう。

海外投資家に人気の市場とは?

アジア開発銀行(ADB)によると、債券保有者に占める海外投資家の割合が最も高いのは韓国です。データによると2023年9月末時点で、現地通貨建て国債の20.3%を海外投資家が保有しています3。一方、ベトナムは現地通貨建てソブリン債の保有者に占める海外投資家の割合が非常に少なく、市場の中心は銀行と保険会社で、購入者全体の99.4%を占めています4

韓国の債券は、国際債券指数に採用される可能性も

韓国に関しては、同国の債券が影響力のあるFTSEラッセル・グローバル債券指数に採用されやすくなるよう、企画財政部と金融監督院が取引規制の変更を検討しています。また韓国の債券も、2024年7月からユーロクリアの決済プラットフォームの対象となります5

多くのファンドマネージャーの投資マンデートがベンチマークに採用している、主要なグローバル債券指数に組み入れられれば、海外からの投資はさらに増える可能性があります。地域の市場が成熟するのに伴い、おそらくこうした指数に採用されるアジアの債券は増えるでしょう。

アジア現地通貨建て債券のリスク・リワード

国債や準国債は、社債と異なるリスク特性をもっています。それは、理論的に、政府は元利払いが必要な際に現地通貨を創出できるからです。

社債の場合、発行企業の業績が悪化あるいは倒産の危機に直面した場合、デフォルトに陥るリスクがあります。社債に内在するクレジットリスクは、「リスク・フリー」の国債に対する利回りスプレッドで測定されます。リスクカーブ上を下方にシフトする用意のある投資家は、そうした債券からより高い利回りを受け取ることで、追加リスクを取ったことに対する報酬が期待できます。

歴史が示すように、特定の現地通貨の価値は、米ドルやユーロなどの主要通貨と比べて急激に下落する可能性があります。多くの投資家は、通貨フォワードを用いてリスクをヘッジします。このヘッジ・コストはリターンを損なう可能性があるため、海外投資家が考慮すべき重要な変数です6。債券投資家は、投資資金が返済されない可能性ならびに通貨が切り下げられるリスクを評価する必要があります。

アジアの経済成長は、欧米の経済成長を上回る見通し

国際通貨基金(IMF)は2024年4月の「世界経済見通し」で、2024年のアジアの新興国・発展途上国の実質国内総生産(GDP)成長率は5.2%に達するとの予想を示しました。一方、2024年の米国の実質GDP成長率は2.7%、ユーロ圏は0.8%にとどまるとしています7

この乖離はとりわけ、より成熟している欧米諸国と比べ、アジア地域に力強い成長余地があることを反映しています。人口の伸びは労働力を押し上げ、財とサービスに対する消費需要をさらに生み出すことから、多くのアジア市場にとって引き続き、好ましい追い風となっています8

海外投資家は引き続き、現地通貨建て債券に妙味を感じています

一部アジア市場の現地通貨建て債券を購入している海外投資家は、おそらく、通貨の潜在的な値上がりよりも、相対的に高い現在の利回りに妙味を感じていると思われます。良好なマクロ経済のファンダメンタルズも、通貨切り下げの可能性に対する投資家の懸念を和らげる役目を果たしています。

中期的には、銀行、年金、生命保険などの国内投資家が、引き続きアジアの現地通貨建て債券の主要な保有者にとどまる可能性が高いものとみられます。長期的には、グローバル・リーダーとして認知されるようになったアジア地域の企業が発行する外貨建て債券への海外投資が上向く可能性があります。

Related Articles