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米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレと戦う中、アジアの現地通貨建て債券の展望は?

当社は、FRBが物価上昇と戦い続けることがアジアの現地通貨建て債券にどのような影響を与えるのか、また厳しい世界経済環境の中で、どのような投資機会が存在するのかを探っています。

Asia Pacific Head of Fixed Income, Head of SSGA Singapore

FRBは、インフレと(実際のインフレと同等に重要な)インフレ期待を抑制するというコミットメントに引き続き集中し、断固とした姿勢で取り組んでいます。FRBが物価上昇に対抗するための主な手段は、タカ派的な一連の利上げです。しかし、こうした利上げは、経済活動のブレーキになる可能性もあります。したがって、FRBにとっての真の課題は、インフレを抑制するのに十分な程度に経済を減速させつつ、景気の停滞や急落が起きないようにバランスを取ることです。

FRBはタカ派的だが利上げペースを遅らせる可能性がある

FRBのインフレ目標は2%に設定されており1、FRBは目標達成まで利上げを継続する準備ができていることを明確にしています。最近の消費者物価指数(CPI)データでは、総合インフレ率が9月の前年同月比8.2%から10月の同7.7%に低下したことが示されました2。この上昇率は市場予想を下回り、前年同月比としては2022年1月以来の低さとなりました。CPIデータからは、FRBがもはや従来ほど積極的なペースで利上げを行う必要がない可能性がある、という好ましい示唆が読み取れます。

FRBの行動はほとんどの市場に影響を与えるが、すべてではない

世界中のほとんどの中央銀行は、FRBに追随して金利を引き上げざるを得ないと感じています。これはインフレに対抗するためだけでなく、自国通貨の切り下げを防ぐためでもあります。中央銀行が自国通貨の過度な下落を許せば、外国の商品やサービスの価格が上昇し、インフレを輸入してしまうリスクがあるからです。そうなれば、インフレを抑制するために、どちらにせよ金利を引き上げる必要が出てきます。しかし、中国はこの原則の大きな例外です。中国はその規模と経済力、そして欧米諸国とは景気サイクルの段階が異なるという事実により、異なった道を歩むことが可能となっています。

中国は、パンデミック後の景気回復に向けて態勢を整えている

中国が厳格なゼロコロナ政策を緩和し始めたことは、前向きな兆しです3。完全な経済再開はすぐには望めませんが、長期的に見ると、自由な移動と経済活動が再開されれば、経済にとってプラスになります。消費者はパンデミックのピーク時に購入を見送った商品やサービスを購入するため、爆発的な繰延需要が経済にもたらされる可能性が高いでしょう。また、中国政府は財政・金融政策を通じて、経済を活性化させることができます。これは多くの国が持っている選択肢ではありません。もう一つのプラス材料は、中国共産党全国代表大会を受けて、習近平国家主席の権力が強化され、習氏の長期的な政策目標の継続が可能になったことです4。この目標は、質の高い経済成長、主要技術分野の革新と投資、所得格差の縮小を優先するものです。

こうした状況は、アジア現地通貨建て債券にとってどのような意味を持つか?

中央銀行が大幅な利上げや迅速な利上げを従来のように行う必要がなくなるという兆候は、債券投資家にとって好ましいと考えるべきでしょう。幸いなことに、アジアのほとんどの中央銀行は、先回りしてインフレ対策を実施してきました。そのような抜け目ない対応ができているということは、物価上昇が安定すれば金利の上昇が止まる可能性を意味します。そうなれば、投資家にとって、現地通貨建て債券の魅力が高まり、利回りとキャリーの両面で追い風となるでしょう。

投資家はどのようなポジションを取るべきか?

今年、いくつかのアジア通貨が急落したことは、米国金利の将来的な推移に関して、すでに最悪のシナリオが現地通貨建て債券に織り込まれていることを意味する可能性があります。アジアの中央銀行は、これまで外貨準備を活用して自国通貨をスムーズに下落させ、通貨価値の不安定化につながる暴落を回避しています5

これは、投資家にとって魅力的な利回りと潜在的な値上がり益を獲得する、新たな機会を提供することになります。ただし、自国通貨建てではなく、米ドル建てで多額の債券を発行している企業は、米ドル高が続けば債務の返済に苦しむ可能性があるため、慎重な見方が必要です。

中期的には、米国金利が予想通りに上昇を続ければ、短期債は一定のプロテクションになり得ます。しかし、米国の金利がピークに近づくと、長期債へのシフトが有利になることも考えられます。セクター別では、中国の消費者需要に関連する企業や、中国が現在重視している先進技術分野の企業の社債に目を向けるのも良いでしょう。

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