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グローバルな課題にもかかわらず、アジア債券に投資機会

地政学的・経済的な不確実性が潜在しているものの、アジアの現地通貨建て債券市場には、まだ発掘されていない投資機会が豊富に存在しています。

Asia Pacific Head of Fixed Income, Head of SSGA Singapore

2024年の各国中央銀行は、インフレ抑制を目的とした金融政策スタンスから、景気後退リスクを軽減させ、その上で過熱も、冷え込みも、し過ぎない経済でソフトランディングを実現する金融政策スタンスへとうまく移行させることが求められています。

アジアにおける状況はより複雑で、一部では、金融政策サイクルで米連邦準備制度理事会(FRB)をわずかに先行し、利上げの停止や、既に借入コストの引き下げに動き始めている市場もあります。

当社の基本シナリオでは、各国中央銀行は市場予想を上回るペースで金利を引き下げるとみています。2023年の米国経済は、借入コストの上昇にもかかわらず、驚くほどの底堅さを示しました。しかし、一部のアナリストは、金利上昇が企業や消費者に与える影響がまだ完全には浸透していないと考えています。米国経済が急速に悪化した場合、FRBはかなり積極的な利下げを余儀なくされる可能性があります。

世界の経済成長率は、トレンドを下回る可能性が高い

シクリカルな企業や業界が支配的なアジア市場は、世界的な経済成長の鈍化に特に影響を受けやすくなっています。さらに、世界の財需要が軟化すれば、輸出受注への依存度が高い国の経済にとって重石になるとみられます。

例えば、インドは財やサービスの国内市場が大きく、また成長しており、世界貿易への依存度はそれほど高くありません。また、インド経済は、力強く成長していることに加えて十分に多様化され、特定のセクターの予期せぬ変動に左右されにくいことから、今後数年間は投資妙味があると思われます。

対照的に、韓国や台湾は、新興国市場指数(中国を除く)の国別ウェイトにおいて、単一の銘柄がそれぞれの指数の30%超を占めています。

地政学的緊張は高止まりしている

2024年を展望すると、いくつかの分岐点が予想されます。台湾の総統選挙と米国の大統領選挙は、貿易の流れに混乱をもたらし、投資家心理を動揺させる可能性があります。ウクライナとロシアの戦争はエネルギー価格や食品価格を押し上げる可能性があり、イスラエルとハマスの紛争はより広範な地域に波及する恐れがあります。

これらの火種をきっかけに、低成長下でインフレ率が上昇し、世界経済のディスインフレ軌道を狂わせる可能性があります。

アジアの中でも、国内で生産され、国内で消費または他のエネルギー製品と交易できるエネルギー供給源を持つ市場は、燃料を輸入に依存している市場と比べると、価格ショックに耐えられるはずです。

特定のセクターでは、政策が追い風に

中国では、技術的な自立や電化といった一部の成長分野に対して、政府が積極的に成長促進を図っています。実際に、半導体チップ製造に関連した最近の米中貿易制裁は、中国が国内のチップ製造能力を高める取り組みを強化する可能性が高いことを示唆しており、ハイテクセクターで事業を展開する国内企業に恩恵が見込まれます。

通貨と債券のボラティリティが高まる可能性

大半のアジア市場は過去数年間、通貨価値の急落を回避してきました。これは、中央銀行による優れた統制に加え、規制システムが成熟し、改善したことも寄与していると思われます。2023年を通じて、ほとんどのアジア通貨は、対ドルで価値を維持しました。しかし、為替や原油価格の変動が予想される中、2024年にはこうした安定が続かない可能性があります。

ほとんどのアジア通貨が比較的安定していることによるプラス面の1つとして、現地通貨建て債券をめぐるリスクが軽減され、外国人投資家にとっての現地通貨建て債券の魅力が増しています。

地域の断絶

前述の通り、アジア各国の金融政策は、以前ほどFRBに同調しなくなっています。その結果、米国債の利回りと新興国現地通貨建て債券の利回り格差は、過去15年間で最も低い水準となっています。

さらに、ドル高は、新興国のインフレトレンドや為替リターンに影響を与える問題を生み出しています。とはいえ、現地通貨建て新興国債券指数に含まれる一部の銘柄では、米国債を下回るものの、実質利回りがプラスに転じています。

2023年には、現地通貨建て新興国債券指数であるJPモルガンGBI-EMグローバル・ディバーシファイドに、インドが組み入れられることが発表されました。これにより、投資家には新たな分散投資の機会とインドの成長ストーリーに対するエクスポージャーが提供されます。

楽観の理由

地政学的緊張が高まり、それに伴ってエネルギー価格が高騰する可能性があるため、2024年にはある程度の警戒が必要です。しかし、ウクライナとロシアの紛争に前向きな外交的決着がつけば、投資家のセンチメントが改善し、世界的なコモディティの供給問題も緩和する可能性があります。

米国と世界経済が、比較的緩やかなソフトランディングを達成できれば、世界貿易は、アジア全体の輸出関連業界の継続的成長を支えるのに十分な、堅調さを維持すると予想されます。不透明感は残るものの、この多面的な地域の至る所に、アジア債券の投資家にとっては投資機会があるものと思われます。

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